“ふじのくに”から飛躍するアーティスト紹介

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写真奥村 友美   Tomomi Okumura

ピアノ
静岡県浜松市出身

2012年6月、奥村さんの出身地・浜松市にて、ピアノとの出会い、音楽の道を志すようになったきっかけ、ドイツ留学を通して感じたもの、指導者として心がけていることなど、いろいろなお話を聞かせていただきました。

[インタビュー日時]
2012年6月3日 浜松市内のレストランにて
(聞き手:FCN理事 斉藤 勇)


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Q1.
子供の頃、最初にピアノを弾こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
また、いろいろある楽器の中で、ピアノを弾きたいと思った一番の理由は何でしょうか?

A1.
ピアノを始めた頃の記憶はないのですが、母がピアノの先生だったので昔から家にピアノがありました。常にピアノの音が流れているのが日常だったので、本当に「自然に」という感じで、いつのまにかピアノを弾いていたみたいです。物心ついた頃には弾いていました。



Q2.
先生はお母さん?

A2.
もちろん最初は母に手ほどきしてもらったみたいですけど、正式に先生について習い始めたというのは4歳の時です。親子だと上手くいかない事があるんじゃないか?ということも考えてのことだと思いますが、母が別の先生に私の指導をお願いして、中学校を卒業するまでレッスンを受けました。レッスンの先生に関しては、すごく恵まれていました。10年ほど、その先生に基礎から全部を教わりました。ですので、母に教わった記憶は全くないんです。普段、私が練習している時も、母からすれば色々言いたい事もあると思うんですけど、あまり言われた記憶がないですね。親子だと難しいと思うので(笑)

Q3.
ピアノの一番の魅力はどんなところですか? また、こういったところを聴いてほしい!って思うところは何でしょうか?

A3.
一台の楽器でいろんな役をこなせるところだと思います。例えば、オーケストラの曲も、ピアノ一台で弾けてしまうのが一番の魅力だと思います。鍵盤を叩けば、誰でも音は出せるんですけど、そこをさらに追求していくと、弾き方ひとつで色々な音色を出すことができて、同じ楽器でも全く違う音を奏でることができるんです。弾く人によって全く違う音色を響かせることができるということも魅力の一つですね。

Q4
中学校まで浜松の学校に通って、高校から東京藝大の付属高校、大学は東京藝大で音楽を専門に学ばれましたが、何歳の頃から、音楽の道を目指したい!って思いましたか?

A4.
小さい頃、将来の夢は「ピアニスト」って書いていた時期もあったんですけど、その頃はまだ現実的な夢ではなかった感じでした。中学生の時、学生音楽コンクールの全国大会で第1位をいただいたんですが、それがすごく思いがけない事だったんですけど、それをきっかけにして、音楽の専門の高校に行こうと決心しました。そこが一番の転機だったかなと思います。

Q5
東京藝大付属高校に入学して、実際にどうでしたか? 人数も少ないってお聞きしましたが…。

A5.
クラスの人数は40人くらいで、色々な楽器の人がいます。全国各地から集まってきているし、本当に音楽のマニアみたいな子もいたりして、結構カルチャーショックがありました。授業もレベルがすごく高かったので、本当に音楽の専門の学校に来たんだということをすごく感じていました。その反面、普通の高校にも行ってみたかったという憧れみたいなものもあります。いまだに(笑)



Q6.
東京藝大からドイツに渡られ、ドイツの大学で学び、その後もドイツで演奏活動を続けてこられましたが、ドイツを選ばれた理由は何でしょうか?

A6.
大学入ってすぐの頃は、あまりドイツの作品を好んで弾いてなかったんですけど、少しずつ年齢を重ねるに連れて、ベートーヴェン、シューマン、ブラームスなどのドイツ音楽にすごく魅力を感じるようになってきました。それで、卒業してからは、本場のドイツで、ドイツ音楽を学びたいなと思い、ドイツに留学することを決めました。

Q7.
ドイツといいますと、バッハやベートーヴェンの名前が思い浮かびますが、現地に長く滞在され、直接本場の音楽にふれたり、ご自身も演奏活動をされていく中で、ドイツ音楽に対する印象に変化はありましたか?

A7.
ドイツに住んですぐに何かを感じるという訳ではなかったんですが、だんだんと住み慣れていくうちに、言葉も通じるようになりますし、ドイツの気候や風土を肌で感じていくうちに、ベートーヴェンなど弾いている時など、何か前とは違う感覚になってきたように思います。生活の中で自然に吸収していくような感じで変わっていったと思いますね。



Q8
奥村さんは、ご自身のリサイタルでもベートーヴェンの作品をよく取り上げられていますが、ベートーヴェンの音楽の魅力をどのようなところに感じていますか?

A8.
音楽家でありながら聴覚を失ってしまうという絶望的な状況におかれながら、それでも音楽を生み出すことで、生きる目的を見つけていったという強い精神力や、向上心があって新しい事に次々と挑戦を続ける強い意志の中にも、とても人間味あふれる温かい音楽があったり、といったところにすごく魅力を感じています。

Q9.
先日(2012年5月)もドイツに行かれて演奏会を開かれたと伺っています。ドイツでの演奏、そして、今回の訪問はいかがでしたか?

A9.
今回演奏した所はもう三回目になります。同じコンサートのシリーズの中で演奏したんですけど、会場に足を運んでくださった皆さんより「是非また聴きたい」とおっしゃって下さるなど、とても温かい聴衆の方々が多かったのが嬉しかったです。今回は特に難しいプログラムで、一般的には知られていないような曲だったんですけど、そういう曲でもすごく集中して聴いて下さるっていうところもヨーロッパの文化なのかなとも感じます。

 
(写真:奥村さんがドイツ滞在時にご自身で撮影した街の風景)

Q10.
奥村さんは現在、東京と愛知の音楽大学で講師をされていますが、学生たちへのレッスンをする上で、特に大事にされていることなどありますか?

A10.
まず、楽譜を良く読んで作曲家の意図をしっかり汲み取ることが第一で、その上で自分なりの表現とか解釈をもって演奏するということが大事だということを教えるようにしています。
ただ、作曲家の意図から外れるようなことはしない方がいいとは教えるんですけど、自分なりの個性を出したり、表現することは、とても大切なことですので、最初からダメとは言わないで、学生ひとりひとりが持つ個性や良さを伸ばしてあげるように心がけています。
ただ楽譜に忠実に弾くだけは、聴いている皆さんには伝わらないので、私の場合もそうですが、自分が思っていることを、より伝わるように意識しながら演奏しています。自分で思っているよりも意識的に大きく表現するようにしています。そういうことも大事かなと思っています。

Q11.
奥村さんは、浜松のご出身ですが、浜松はピアノの製造では世界的な都市であり、古くから楽器の街とよばれてきています。いま、浜松市は「音楽の都」を目指して音楽創造都市のビジョンを掲げています。浜松で育ったピアニストとして、これからの浜松に期待することはありますか?

A11.
どこの都市も同じだと思うんですが、財政的にも音楽文化にかける予算が削られている状況だと思いますが、その中でも音楽の街を掲げている浜松では、国際ピアノコンクールやピアノアカデミーなど色々やっているので、そういったイベントはもちろん続けていってもらいたいし、地元で長く活躍されている方々も沢山いらっしゃるので、そういった方々とも協力していきながら、浜松の音楽文化がさらに盛り上げていけたらいいなと思います。

Q12.
最後に、今後の奥村さんの音楽活動に対する抱負やビジョンがありましたら、お聞かせください。

A12.
日本に帰国したこともあって、ドイツで勉強した成果を発表するということもあるんですけど、これからは皆さんが聴いて喜んでくださるようなプログラムをもう少し考えていきたいと思いますし、あとは、個人的には室内楽アンサンブルのようなものを取り入れてやっていきたいなと思っています。


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奥村さん、インタビューにご協力ありがとうございました。


公開映像 

♪リスト “愛の夢” (ピアノ : 奥村友美)

↓公開映像はこちら

(FCN公式ホームページ“公開映像”コーナーより

PROFILE 

奥村 友美 (おくむら ともみ)

静岡県浜松市生まれ。
4歳でピアノを始め、第46回全日本学生音楽コンクール全国大会中学生の部第1位、野村賞を受賞。東京藝術大学附属音楽高等学校を経て、東京藝術大学音楽学部を同声会賞および読売新人賞を受賞し卒業。
大学在学中、弱冠19歳でパデレフスキー国際ピアノコンクール(ポーランド)第1位受賞。2001年に渡独し、財団法人ロームミュージックファンデーションの奨学生として、ベルリン音楽大学ハンスアイスラー及び同大学院にて研鑽を積む。

2005年、ケルン国際ピアノコンクール第3位。
2006年、ゲザ・アンダ国際ピアノコンクール(スイス)第3位を受賞、3年間のコンサート契約を交わし、ヨーロッパを中心に15か所でリサイタルやオーケストラとの協演を果たす。その演奏は「洗練された色彩豊かな音色のパレットから描き出される音の絵」と評された。また、ドイツ中央放送局との契約によりホルントリオのレコーディングを行う。
2008年、ベルリン音楽大学ハンスアイスラー大学院を最高位の成績で卒業、ドイツ国家演奏家資格を取得。同年、ドイツ、チェコ5都市でのコンチェルトツアーも好評を博した。

藝大フィルハーモニア、浜松市民オーケストラ、浜松フィルハーモニー管弦楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、ブランデンブルク管弦楽団、西ドイツ放送交響楽団、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団、ヴィンタートゥール室内管弦楽団、チェコ国立モラヴィアフィルハーモニー管弦楽団など国内外のオーケストラと協演。

NHK-FM「名曲リサイタル」、第30回横浜市国際招待ピアノ演奏会、ヨーロッパ各地の音楽祭に出演する他、ドイツ、ポーランド、オーストリア、チェコ、スイス、イギリス、クウェート、ブラジルをはじめ国内外にてソロ・室内楽の分野で意欲的に活動する。

これまでに安倍紀子、故中島和彦、倉沢仁子、御木本澄子、播本枝未子、ゲオルク・サヴァの各氏に師事。
現在、国立音楽大学 および 愛知県立芸術大学 非常勤講師。

[Pianist Tomomi Okumura 公式ホームページ]
http://tomomiokumura.com/